ブックタイトルgokoku2011aki

ページ
17/40

このページは gokoku2011aki の電子ブックに掲載されている17ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

gokoku2011aki

ブックを読む

Flash版でブックを開く

概要

gokoku2011aki

取材を終えて喜びも悲しみも共に「文化祭で、中なか玉たま利り先生と明石焼を作ることになったんです」と、女子生徒の笑顔がはじける。どこにでもある放課後の一幕だが、校舎に残る震災の爪痕は痛々しい。女川町の高台にある宮城県女川高等学校。津波による直撃は免れたものの、裾野に広がる壊滅的な町の姿に言葉を失う。人の被害も甚大だ。町内や石巻市内から通う全校生徒の3分の2が被災。家族を亡くした生徒も少なくない。「高校生には大人と子どもの両面がある。表面的に大丈夫そうに見えても、心はどうかという懸念から養護教諭の加配要請に至った」と小泉博校長は言う。7月に兵庫県から派遣された養護教諭の中玉利展子先生。阪神・淡路大震災を経験し、災害時の心のケアについて知識も豊富だ。だが、この震災がもたらしたものは想像以上だと言う。「津波被害ではご遺体が見つからない。残された方の心の向き合い方が違う」。生徒が望む時に側にいられるよう職員室にできるだけ詰める。何気ない会話から放たれるSOSを聞き逃さない。「癒やすとか、寄り添うとかではなく、頑張っている子どもたちと一緒に楽しんだり、悩んだりしたい」。“ゆっくり歩いたらええねんで”そう語る先生の目に、ほっとする生徒は多いはずだ。任期を終える3月末、関西弁と明石焼を覚えた生徒たちが先生と別れを惜しむ姿が目に浮かぶ。未来へ生かす南三陸町立志津川中学校は長年防災教育に力を入れてきた。「だからこそ震災による精神的な影響は大きい」と人と防災未来センターの石川永子主任研究員。しかし、菅原文彦教頭は「失ったものは多いが教科書では学べないことを体験した。震災前より中身の濃い学習をさせてあげたい」と、防災教育を震災から立ち上がる契機にと決意を新たにする。この秋からセンターとともに継続的な学習を開始。石川さんは「未来を担う若者にこそまちづくりに携わってほしい」と言う。生徒たちが町の復興にどう関われるか。未来への第一歩が踏み出された。***学校現場における3・11からの歩み方はさまざまだ。しかしどの学校も、子どもたちを守る、震災をばねにする強い決意に満ちている。そして、1・17以降を生きてきた私たちは、その思いと共にあると感じた。宮城県危機対策課東海林清広さん兵庫県養護教諭(女川高校派遣)中玉利展子さん女川高校生徒会長髙橋勇太さん取材班に同行したテレビディレクター兼カメラマン戸川隆史さん先生とおしゃべりがしたくて職員室に通う生徒も多い。子どもたちと震災15